JAM

JAM2022 二次オーディション審査員のお三方より、総評をいただきましたので公開いたします。

はじめに

今回の二次オーディションでは新型コロナウィルス感染症の感染拡大、ならびに台風14号の影響により5バンドが後日の動画審査となりました。

動画審査につきましては、実地審査後の動画提出となるため、審査方法による有利・不利が生じないよう審査員3名で協議の上、以下の条件にて行いました。

・動画および音源の編集不可
・リップシンク(口パク)の禁止
・MCを含むステージ全編を収録
・スピーカーから出た外音を空間収録(ライン音源不可)

公平な条件下での動画審査を実施するために、実地審査後に一定の収録準備期間を設けたことで、審査結果の発表にお時間をいただくこととなりました。
お待たせしました皆様にお詫び申し上げますと共に、円滑な二次オーディションにご協力いただいたご出演者・ご来場者・関係者の皆様に改めて御礼申し上げます。

審査総評

ファレルさん

皆様、JAM2次審査お疲れ様でした。審査員でありながら、一人の観客としても演奏を楽しませていただきました。

今回の審査において、私が重要視したポイントは「バンドメンバー全員の表現」です。

演奏はもちろん、歌う姿やMC、表情、視線など、ステージではあらゆるもので表現を見せることができます。逆に言うとそれだけ表現の要素が多いとも言えます。

その要素の多い状態では、バンドとしての表現をメンバー間でどれだけ共有しているかによって一体感に大きな差が生まれます。さらに言うとこの表現はできていない方に引っ張られやすいものだと思っています。

ステージに立つ以上、どのパートであってもそのステージを作り上げる演者の一人です。一人の演者として常にバンドに最適な表現をすることを聴覚的にも視覚的にも心掛けてほしいと思います。

また、観客に姿が見え始めてから完全に見えなくなるまでが自分たちの表現になります。

演奏が表現の大部分を占めるとはいえ、入りはけや曲間で雰囲気が崩れると非常にもったいないです。最初から最後まで観客を自分たちの世界に浸らせる、意図しない違和感を与えないということもぜひ意識してみてください。

Shioさん

皆様、2次審査大変お疲れ様でした。

この度の審査においては、自分の好みや音楽性への共感などの観点は一旦グッと堪えて、「上手さ」「人の心を動かせるかどうか」といった客観的な部分のクオリティを第一に点をつけました。また、本選への通過バンドのバランスなども考えていません。

その観点で、この場で一つ挙げるとすると、アカペラという限られた音数の中でどれだけ「埋められているか」が基準になったと思います。この「埋められているか」は、観客を世界に引き込むためにどれだけあの箱を包み込めたかということです。

まず縦で見ると、ベースとコーラスの間の音域が空いてしまっているバンドが目立ちました。それはアレンジの問題の場合もありますし、ベースの発声が下に潜りすぎていたり、一番下のコーラスの低音成分が足りないことが原因の場合もあるでしょう。逆に高音の方でも、コーラスの発声がちゃんと倍音を鳴らすものでないとリードと音域が被ってゴチャゴチャになってしまいます。高音から低音まで、全ての帯域をどう埋めていくのかというアプローチができているバンドは、会場を音で包み込めるので、観客も演奏に引き込まれるでしょう。また、パーカスが大きすぎたりコーラス内での音量が揃っていなかったりと、全体の音量バランスが気になるバンドもありました。一人だけ突出して大きな音を出すと、観客はそこを基準に聴いてしまいます。バンドが最大音量を出すときに全体が埋まっていないと、デカい割にスカスカな音となってしまい、結果的にダイナミクスが物足りなく感じてしまうものです。

そして、横で埋まっているという意味では、音の切れ目に気を付けるということです。リードやコーラスが歌詞を歌う際に、一文字一文字の間に無意識な隙間がある人たちがいました。またベースでも音価を伸ばし切れなかったり、音の切りへの意識がない演奏も目立ちました。もちろん編曲での工夫もできる部分だと思います。一番気持ちよくなってほしい時にブツブツ音が切れてしまうと、やはりダイナミクスがぼやけてしまい物足りなくなってしまいます。

自分が高得点をつけたバンドはこの点において、安心して演奏に耳と体を委ねることができ、自然とバンドのコンセプトやメッセージに思いを馳せるなどすることができました。逆に低得点をつけたバンドは、演奏に入り込めなかったため、バンドが表現したいことはわかるがこちらから忖度しなければならない、ということが多かったです。

ちなみに、最初に申し上げた通り今回は客観的なクオリティを重視して選びましたので、個人的な好みやグッと来たバンドという意味では魅力的なバンドをたくさん見つけました。そのようなバンドにおかれましては、その魅力を活かしつつもっともっと技術を上げていってほしいなと願っています。

Komeiさん

数年ぶりに実地審査が復活したということもあり、出演者・観客のアカペラ熱が高まっているのを感じながら楽しく審査をさせて頂きました。私の一貫した審査基準は「伝わる」を重視して採点しています。楽譜再現の正確さ、歌詞の発音やシラブルの音色、フレージング、リズムや言語のアクセントの位置・強弱、抑揚、さらにはステージ上での身体の動かし方や立ち居振る舞い、MCの内容や語調、衣装、表情などの演技面を総合的に観て/聴いて、【表現したい/伝えたいものに対し、違和感がなく(あっても)より伝わりやすくするための効果的なパフォーマンスが出来ている】グループを高く評価しています。

全体的に高いレベルの演奏の中で差が出たのは、自分達の演奏・パフォーマンスをステージ中も含めて全員がグループ全体を常に客観視できているか、そしてその客観視の解像度をどこまで高く出来ているかという点です。
一次・二次・本選と、それぞれ異なる複数人の審査員がそれぞれの価値観のみに殉じて審査するJAMは、グループの総合力が問われるイベントです。どこまで自分達の強みを伸ばせるか、弱みを理解して減らしたりカバーするか、誰が観て/聴いても隙のない演奏にするために細部のささいな違和感まで自分達でどこまで気付き、向き合えるかが総合力を高めるカギだと思います。

また、実地ならではの難しさですが、機材や環境などの外的要因の影響をどのようにコントロールするのかも重要だと感じました。現場で出来るマイキングの工夫はもちろん、事前の準備としてPAシートの内容や書き方の工夫で予防線を張る、会場を事前に下見したり配信を聴いて立ち位置や鳴らし方を共有する等、自分達の音を理想的なバランスで届けることへの執着・こだわりを大切にしてみてください。またどこかで皆さんの音楽に触れられることを楽しみにしています!

Komei (from “suisai”)

引き続きJapan A cappella Movementをよろしくお願いいたします。

Japan A cappella Movement 2022 実行委員会