JAM

JAM2023の審査員のおっくん(おくむら政佳)様・加藤ぬ。様・吉田圭介様より審査総評をいただきましたので、公表致します。

おっくん(おくむら政佳)様

 今年のJAMは本当に暖かかったですね。当日の最高気温はなんと21℃。10月中旬並みということで、みなさんも歌いやすかったかな。

 さて、総評ということですが、今年の本選も、ハモリの差というより「会場との一体感を作れたかどうか?」の差がはっきり表れていました。

 JAM本選が2次審査と大きく違う所は、アカペラファン以外の方々もたくさんいらっしゃる場だということ。なので、そのステージの空気をまず掴み、包み込んでゆくには特別な意識が必要です。単にコールアンドレスポンスをするなどのテクニック論ではなく、バンドが意図して作戦を立て、聴き手の半歩先から、絶妙な力加減で少しずつ引き込んでゆく意識。 

 そのためには、衣装や立ち振る舞いはもちろん、音取りのタイミング、MCの1秒の間でさえも会場の空気に影響します。本選はステージ登場から最後の拍手まで、聞き手の気持ちを切らさぬように導いてゆく、小さな時間の繰り返し、積み重ねなのです。

  一人の圧倒的なリード力などでも一瞬の雰囲気を持ってゆくことはできるのですが、15分は持ちません。聞き手側の気持ちの可塑性や許容量を超える強引なMCも、みんなが置いてきぼりとなり、会場全体の空気感も変えることはできません。会場の空気を作り、結果的にお客様の足を多く止めていたバンドは、聞き手への丁寧な積み重ねが意図してできていたグループでしたし、審査員としても当然高く評価をしました。

 そんな中、今回の”The Boogie City”は、他とかぶらなかったコンセプトのオリジナリティ、ステージ全体を使った動きやコールandレスポンス、そしてメジャーな曲のカバーという力が合わさることで、しっかりとあの「会場力」も生かし、盛り上がりを作ったことが評価につながりました。

 そして今回、私がもう一つ推したグループは、「燕子花」です。

 ここの演奏の凄みは、まるで上手な書道家のように、全員が音符と歌詞の「止め」「はらい」をしっかり決めてきたことです。それもステージ登場から退場まで。グループ結成わずか半年でその高みが出来ているというのは、相当メンバーの意識と力量が必要ですし、それがあるということ。 これは他のバンドのお手本になる点だと思い、高く評価しました。

 さて、来年はJAM開始から四半世紀。

 いまから、どんなバンドが出てくるか楽しみにしています!

加藤ぬ。様

皆様こんにちは、加藤ぬ。です。

Japan Acappella Movement2023本選について、講評をお伝えいたします。

今回の審査において私が重要視したのは、「瞬間瞬間のパフォーマンスが観客・空間に与えた影響そのもの」です。

パフォーマンスの影響は即ちその結果であり、それがそのまま審査の結果にも直結しました。

具体的には「ステージトータルで充実したパフォーマンスであったか?」という点が、審査に大きく影響しました。

「やりたいこと」と「自分たちの実力」を徹底的にそしてシビアに見つめ、最善の選択をした上でステージに臨むことが重要だと考えます。

全体を通して、ステージパフォーマンスとしての意識が高いと感じました。空気作りを重要視していることが、多くのグループから伝わってきて良かったです。

その一方で、音楽として成立させるに当たって必要となる「基本的な要素」については、まだまだ向上の余地があると感じました。

今後も、さらに面白いアカペラが聴けることを、一人のアカペラ・JAMファンとして楽しみにしています。

今後のJAM、そしてアカペラ文化の発展を願って。

吉田圭介様

大変恐ろしく素晴らしい大会でした!

和音鳴らそう意識が高い。

自分達のカラーと向き合えていて、めっちゃ考えて構成や編曲がされている。

考えることが多い中で本番では極力楽しもうとしている。人によって冷静になろうとしている。

全てがとても良かったです。

私自身の活動にも初心に返るというか、襟を正されたような気持ちもありました。

“ミスは許されない”そんな心の声が聞こえてきそうなほどコンクール的な緊張感の極めて強いJAMだけに、演者も観ている人々も多少ピリッとしていた固さはあったかもしれません。そんなプレッシャーの中、全グループあれだけのパフォーマンスができるなんて、本当にあっぱれです。音源再現大会になりすぎることなくちゃんと”ライブ”を感じることもできました。

普段コーラスディレクターもしてますので、あなたはもっとこうしたらより楽しくなるよとか、こうしたらもっと輝けるんじゃない?とかは個人単位では思う人もいましたが、

もっとざっくりしたことで言うと、

アッパーでのリズム隊は特に、荒くても良いからもっと煽って欲しかった場面がありました。アッパーですら、『安定しなければいけない』という気持ちが伝わってきて、『会場全体私のリズムで体を動かしなさい』という気持ちが見たかったというのはあります。

あと、今回環境(会場音響)を味方にできたかがかなり聴く印象に関わってきたと感じました。

特に音量に個体差のあるleadやbassが埋もれると勿体ない。ここまでオーディションを勝ち進んできた猛者たちのパフォーマンス、ベストなバランスで聴きたかったです。

今は会場内の音のバランス、EQの拘りや少ないリハ時間でのPAへの発注までも実力勝負に含まれるのですね。末恐ろしい。学生時代考えたこともなかったです。

よく誤解されるのですが、自分は興奮のあまりのリズムの走りや感極まってのピッチのブレすら、そこに人間がやってる意味を感じたり、そこから修正することもアカペラの魅力と思って活動したいスタンスなのですが、(なので色んな現場での審査の度に胃痛を起こします)

さすがJAM。本当にJAMはストイック中のストイック。だからファンも多いのでしょう。

とんでもないレベルの演奏の数々に、とんでもない水準での審査をせざるを得なく、とても心苦しかったです。

しかし同時に色んな世界観のアカペラを感じることができて、最幸でした。

ありがとうございました。

今の気持ちの中で一番でかいのは、出場者皆さんとセッションしたい!ということです。

癖の強いベースですがいつかどこかで機会があったらよろしくお願いします。

※審査員の方々は50音順で掲載しております。

Japan A cappella Movement 2023 実行委員会